このまちレポート

世田谷区のこどもの貧困対策を学んできました

2016年11月7日

世田谷区のこどもの貧困対策DSC_0552bは、国の制度を基本にしながら、区独自で単独事業を実施したり、区として上乗せを実施していると聞いて、市議団で学習に伺いました。保健福祉部と子ども・若者部の担当課長さんと係長さんが説明をしてくださいました。大変参考になり、質問も1時間以上にわたり、丁寧に答えていただきました。

○児童養護施設退所者等への支援事業

世田谷区の単独事業として、先駆的なのが18歳になり、児童養護施設や里親などからの退所者に、その後の生活支援を今年度から実施していることです。

退所した後、社会に出て一人で自立していくのは相当な困難を伴うことから、昨今、支援の必要性が強調されています。しかし国の施策はまだです。

世田谷区は、そうした若者への〈住宅支援〉として、高齢者向け借り上げ区営住宅に併設される旧生活協力員居住室を月1万円で提供する。大学等への進学者は最終就学年度いっぱいまで、就職者は2年間、現在3住戸に計5名が入居、来年4月にはあと2戸増やす計画とのことです。

〈居場所支援・地域交流支援〉として地域のなかで、身近に相談出来る仲間や大人たち等との関係を築き交流を継続していけるよう、区内2箇所で月1回実施。(岡さんの家、サポコハウス)

〈給付型の奨学金事業〉も実施しています。養護施設、里親、自立ホームから退所する方が、大学などに進学・通学する学費の一部を、年額36万円を上限に給付します。今年度は申請12名に対し11名に給付したそうです。5000万円の原資で基金をつくりスタートし、寄付金を募り、今後は寄付でまかなっていく事業とのことです。10月現在205名から1510万円強の寄付金が集っているとのことです。

この事業に取組むことになった経過として、世田谷区青年会議所が自分たちの活動として、4〜5年前に養護施設への支援として、シンポジュームを始められたが、ちょうど時期を同じくして区の基本計画の見直しの時期と重なった。若者のなかで、引きこもりや若者の困窮度が増していることや自殺者が増えていることから、抜けている施策がみえてきた。次代を担う若者の生きづらさを解消するために、なんとか支援出来ないかと考えて施策を策定したとのことです。奨学金の募金活動は若い人のお祭りや区内の何らかの企画の際にも募金活動を行っているとのことです。

○学びや居場所の支援

学びや居場所の支援も、国の制度を活用しながら都と区の上乗せも実施しています。生活困窮者自立支援法における必須事業を、生活困窮者自立相談支援センター「プラットホーム世田谷」に委託し、社会福祉協議会が運営していますが、任意事業である「子どもの学習支援事業」も当センターが事業として行なっています。

〈学習のできる居場所〉せたがやゼミナール=せたゼミ

大学生や地域のボランティアが学習習慣の定着や学び直し含め学習をサポートします。そして子どもが楽しんで通える居場所を提供、月1回程度食事つくり、食事会なども行ないます。小学生から高校生までを対象に、週1回程度しています。今年度は先程の岡さんのいえの他6箇所で実施、利用料は無料です。送り迎えも必要に応じて開催場所の近隣の駅までボランティアが同行)

〈学習支援の充実かるがもスタディールーム、NPO法人キッズドアに運営委託

世田谷区では平成25年度から、生活困窮の状態にあり、学習塾に行けない、机がないなど家庭でのDSC_0563b環境が整っていないなどの理由から生活習慣の中に学習を取り入れることが難しい小、中学生に学習支援を行なっている「かるがもスタディールーム」について、平成27年度からひとり親世帯のこどもに加え、生活保護世帯・生活困窮世帯の子どもを加えて対象を拡大し、子どもの学習支援を行なっています。社会人や大学生ボランティアさんが担っています。月2回、今年度5箇所で実施。最長2年。

〈ひとり親家庭の子どもの学び直しの支援〉

中学校卒業または高校中退児童に対する高等学校卒業程度の資格付与のための支援として、受講料上限15万円。7人を対象にしているとのことです。国は対象を18歳までとしていますが、世田谷区は39歳まで対象を拡大しています。

世田谷区の子ども食堂の取組について

世田谷区社会福祉協議会では、住民主体で運営する「子ども食堂」の設置支援や運営の支援に取組んでいます「子ども食堂」では、経済的な理由で食事を満足にとれない子や孤食などの状況にある子の食事提供や居場所づくりを行なっています。

8月末までに運営経費の一部助成等を行なった団体は9団体とのことです。申請は15団体あったとのことです。現在、下期の応募を11月1日から18日まで行なっているとのことです。応募要領として、月2回以上の開催を目安に、地域の居場所としての観点から開催場所が固定されていること、また、子どもたちへの居場所と食事の提供を始め、子どもの成長や地域住民との交流が図れるプログラムが考えられていること(学習支援やレクレーションなど)があります。

今、取組んでいる団体の開催場所としては、高齢者の居場所として確保されているふれあいいきいきサロン、オーナーの家、レンタルスペース、お寺、レストランもあるとのことです。それぞれの団体の考え方で対象者を経済的な理由とはしないで、広く地域に呼びかけている所もあるとのことです。

子ども食堂運営支援金は、月2回以上開催の場合の基準金額として子どもの参加見込み数が毎回平均10名以上の場合は2万5千円以内、11名以上の場合は4万円以内とのことです。開催時に子どもに提供する食事やプログラムで消費するものが助成対象とのことです。これは、世田谷区社会福祉協議会の「子ども福祉基金」を活用して提供されるため、区内の地域住民が運営主体で、子どもも世田谷区在住であることが要件とのことです。

また、区立児童館は直営型で25箇所あるうち、現在,喜多見児童館で地域の協力のもと多世代の交流や子どもの心身の健康づくりなどを目的に「じどうかん食堂」を実施しているとのことです。ここは農地がある地域で、職員に調理師資格のある方もいて、厨房もある児童館だったので、始めたとのことでした.他にもそうした児童館がでてくれば実施したいと言っておられました.世田谷区は、行政にやってほしいというより、民間力が強いので心強いといっておられました。

多岐にわたる取組が実践されていて、とても参考になりました。