このまちで子育て このまちレポート

「大阪府羽曳野市の生活困窮対策、西成区の山王子どもセンターとこどもの里を視察しました」(視察1日目11/14)

2016年11月19日

14日、朝7時2分発の新幹線で大阪へ、目一杯この機会にと3日間で10カ所の日程をくんで、上記のとりくみについて大阪・京都・滋賀に視察してきました。帰りは16日19時14分に新横浜着でした。

11月14日

【大阪府羽曳野市役所】

〈生活困窮者対策について〉

生活保護に至っていないけれども、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することが出来なくなるおそれのある人に対応、支援するとして生活困窮者自立支援法が制定されていますが、きめ細かな支援を行なっているとお聞きした羽曳野市の取組を学びました。

① 羽曳野市の特徴のひとつは、自立相談支援事業を直営で行なっていることだと思います。生活保護部局との丁寧な連携がとりやすい、庁内の相互連携や協同体制の担保、支援決定の迅速化、公的責任の明確化が出来ること等が直営のメリットとのことで、今は、民間に委託する考えはないとのことです。

② 同時に、庁内に生活困窮者支援ネットワーク会議を設け、国保に関しては保健年金課、納税担当の税務課、就学援助関係の教育総務課、給食代との関連で教育総務課、下水道など料金に関して下水道課、水道課を対象に保健福祉部が主催で勉強会をもっています。

③ 庁内だけでなく、地域の様々な機関と連携していることです。
生活困窮者支援ネットワーク会議を設け、ハローワークや精神障害支援事業所、在宅介護センターなど18もの機関と日々の連携をどうしていくのか今つくりあげているとのことです。すでに大阪弁護士会との連携で、1ヶ月に1度、2時間、担当弁護士と役所内で相談、自宅まで訪問、勉強会の開催などを行なっているとのことです。

一時生活支援として府内を2ブロックにわけ、シェルターとしてそれぞれ7〜8のビジネスホテルと契約しているとのことです。

市内14校区でふれあいネット雅び(みやび)を活用した住民と専門職の連携する仕組みを作り、社協が中心となって行政もはいって地域住民と顔の見える関係をつくります.困窮者の早期発見→専門的支援→見守り体制をつくる。

CSW(コミュニティーソーシャルワーカー)促進事業を平成16年度から実施、市内に社会福祉協議会に2名、社会福祉法人に1名配置、フードバンクと連携し食料支援を実施。また、教育・福祉連絡会をもち教育委員会との連携をとっていることが大きいと言っていました.

④最後に生活困窮者自立支援制度を有効に活用するには
・ 水際・沖合作戦に加担していないか、要保護状態の人には適切に生活保護制度の適用を。制度の正確な説明など必要とのことです。
・ 庁内外ネットワーク体制が確立しているのか
・ 縦割りに横串をさすツールにする
・ 既存事業を困窮者支援に活用する視点と役割に付加をつける
などが語られました。

羽曳野市の「子どもの貧困対策事業」「子どもの居場所づくり事業」

子どもの将来がその生まれ育った環境に左右されることのないよう、貧困の連鎖の防止を図るための施策として、切れ目のない相談支援サービスの提供体制を整備するとして、

①日常生活支援事業を本年8月開始しています。

教育委員会や福祉関係機関等が連携し、貧困など困難を抱える子どもやその保護者を適切な支援に導く仕組みや体制として、元校長先生を嘱託として1名、社会福祉士等の有資格者2名を「子育て連携支援員」として配置し、支援が必要な子どもとその家庭全体の状況を把握した上で生活支援や学習支援等を行ない、ア)CSWや専門機関等を連携しながら、早期に必要な支援を行なっています.訪問して日常生活などの支援や保護者の就労支援などの情報提供、関係機関との連携、調整を行ないます。イ)学校や訪問などで学習支援や居場所の相談、進学に必要な奨学金など公的支援の情報提供、関係機関との連携、調整を行ないます。

子どもの学習支援(スタディオー)を2010年10月より市単独事で開始

家庭での学習機会や学習する場所のない子どもに対して宿題や予習、復習、受験勉強などの自学自習の場を提供し、元市職員や有償ボランティアスタッフによるサポートを実施、市役所内会議室と社会福祉協議会事務所で毎週土曜日に実施しているとのことです。

子どもの居場所づくり事業

生活に困窮している家庭の子どもたちの基本的な生活習慣付けを支援するため、学習支援を始め相談事業などをすすめ、子どもが安心して過ごせる居場所を地域と連携しながら確保し支援することを目的としています。

月1回以上、1日あたり2時間以上の実施となります。1団体に50万円の補助金を交付、10団体を予定して今年9月に応募したが実際は4団体とのことです。

④「夕刻を支える場」として「ちるさぽ」の活動も興味深くお聞きしました

学校や放課後児童クラブが終わってから夜にかけての時間や学校が休みの時間に子どもたちが安心、安全に過ごせるような取組を行なっています。頂いた冊子には、NPO法人や一般社団法人、医療法人など5事業所の取組が書かれています。ひとりぼっちではない食事の時間があることも共通点です。こどもの貧困問題をきっかけに、すべてのこどもたちの〈居場所〉について考える活動をしています。

冊子にはこう書かれています。「いじめ、虐待、貧困、親の離婚再婚、家庭不和、不登校、高校中退などさまざまな事情でしんどい状態にある子どもたち、寂しい思いを抱えたえまま、夜を過ごす子どもたちがいます。私たちは、子どもたちが多様な大人に出会い、仲間に囲まれて安心して育つことを願って「子どもの居場所つくり」を始めました.何かあった時に頼れる場所、子ども本人が駆け込める場所を、子どもたちの近くに増やしていきたいのです。家庭や学校とも協力しながら存在する、第3の居場所としての「夕刻を支える場」の可能性を考えるきっかけをつくっていきたいと思います」とあり、貧困に限定せず、子どもの居場所づくりを地域にたくさんつくっていくことが大切と考えているとの説明でした。

担当者は、支援を必要とする子どもやその家庭の具体的な実態を実にリアルにお話ししながら事業の説明してくださり、とても熱意が伝わりました。

【西成区 山王子どもセンター】DSC_0072

釜ヶ崎の地域で、放課後児童健全育成事業を行う施設として、地域におけるこどもの遊び場、活動の拠点として活動。異年令の子どもたちと、温かく見守る大人たちが出会うことに寄って子どもたちの可能性を広げ、成長を育む場所として地域に根ざし活動している児童館です。もともとの始まりは1964年にドイツ人の宣教師が西成の自宅で幼児を預かったということが始まりとのことです。そして1996年に社会福祉法人の資格を取得し、児童館として「大阪市こどもの家事業」を行うことに。しかし2014年に、橋下市政は子どもの家事業を廃止。やむなく、留守家庭児対策事業へ移行したとのことで、古い民家を活用して事業を展開しています。また2011年には山王おとなセンターを開設し、主にこどもセンターを巣立つ障がい者や元釜ヶ崎の障がいのある労働者のために就労継続支援も行なっています.外を歩くとあちこちから「まみさん!」と声がかかり、地域に根付いているのがうかがわれました。

【西成区にある こどもの里】DSC_0141

釜ヶ崎の商店街を大分歩き、映画「さとにきたらええやん」の、舞台であるこどもの里に行きました。理事長の荘保さんが迎えてくださいました。

荘保さんは言います。

ここに来るこどもたちのしんどさは親のしんどさでもある.こどものしんどさを解決するには、親のしんどさを解決しないとだめである。こどもの居場所はおとなの居場所でもある事が大切。こどもがピタット里に来なくなることがあって、探すと児童相談所に預けられていた。父親が飯場の仕事に行っている間預けられることがわかった。でもその間その子は学校に行けなくなる。このことから、こどもの里で緊急一時預かりを始めた。その子は父親が飯場に言っている間、里で預かり、学校にも行けるようになった。

そして、今荘保さんは、里親になり3階をリホームしてファミリーホームも行なっています。まさに荘保さんの住まいはここ。24時間の生活の場所となっています。荘保さんはつくろうとした訳ではない、自然にこうなっていったと話されました。

こどもの里が大事にしていることは5つです。

① 必要とする人はだれでも利用出来る場である事(安心な場)
② 遊びの場、休息の場であること(愛されているという実感があり、失敗しても大丈夫な自由な場)
③ 学習の場であること(生きているだけですばらしい、自信と自己尊重な場
④利用するこどもたちや保護者の抱える様々な問題を受入れられる場であること(聴いて、受け止めてくれる人がいる場)
⑤より弱い立場の友達と社会の谷間におかれている友達と共に助け合って生きていける場であること(必要な生活の場、仕事の場など、新しい福祉地域文化を創造する場)です。

荘保さんの考え方、心から納得するお話です。今日であったお二人の女性のパワフルな生き方本当にすごい。まさに地域のこどもたちとくらしを支える生活と一体化しています。