「当事者目線の障害福祉推進条例案」について=代表質問その7
条例策定に向けての取り組みを簡単に
県は、6年前の津久井やまゆり園において19名の命が奪われるという大変痛ましい事件が発生し、その後、園の再生を進める過程において、より良い支援のあり方を模索する中で、本人の意思を尊重し、本人が望む支援を行うためには、当事者目線に立たなくてはならないことに気づいたとし、障害者一人一人の心の声に耳を傾け、支援者や周りの人が工夫することが障害者に関わる人々の喜びにつながり、その実践こそがお互いの心が輝く当事者目線の障害福祉であるとの考えに至り、当事者目線の障害福祉の推進が「共に生きる社会神奈川憲章」の実現につながるものと確認し、その基本となる理念や原則を明らかにした、当事者目線の障害福祉を進めていくための基本的な規範としてこの条例を制定するとし、取り組みを進めてきました。
7月12日の第2回定例会・厚生常任委員会において、「当事者目線の障害福祉推進条例(素案)」について質疑しました(7/28付けのブログで既報)。今議会では条例案が提案されました。常任委員会で質疑したことが条例案にどのように反映されたか質問しました。音声を書き起こしたものですので議事録ではありません。
【石田質問1】
本年第1回定例会に報告された当条例骨子案に対するパブリックコメントが4/7から5/6まで実施されましたが、寄せられた610件の「意見要旨」と「県の考え方」の報告がないまま、第2回定例会の厚生常任委員会に「条例素案」が報告されました。8月15日にそれらが県のホームページに公表されましたが、本来なら少なくても素案と一緒に示されるべきでした。
以下、順次伺ってまいります。
まず、条例制定の理念と基本原理を謳う前文について、パブコメの意見が多数寄せられました。委員会で私は、2008年発効の障害者権利条約に言及し、規定されている障がい者の人権や、基本的自由の享有を確保し、社会の一員として尊厳を持って生活する権利の実現、及び2016年に施行された障害者差別解消法の理念を入れることを求めました。
また、「政策立案過程への障害者の参加」としていることについて、
私たちは、障害者権利条約の大切な柱であり、障がい者の皆さんの強い願いである「私たちのことを私たち抜きに決めないで」の声を実行するために、当事者が「参画」する条例検討委員会の設置を求めてきました。パブコメの意見にも、「受動的な印象のため参画としてほしい」「努めるものとするでは推進されない」などが多数あります。
〈そこで知事に伺います〉
① 障害者権利条約や障害者差別解消法の理念を条例の前文にどのように反映させたのか伺います。
② また、計画段階から意見を述べ、主体となって関わるために「参加」にとどまらず、「参画」を条例に反映することについてどのように考えるのか見解を伺います。
【知事答弁】
まず当事者目線の障害福祉推進条例案に関する条例制定の理念と基本原理を謳う前文および政策立案過程への障がい者の参加についてです。本条例案の前文にはすべての障がい者が自分らしく暮らしていけることができる社会環境の整備や誰もが安心して生き生きと暮らすことのできる地域共生社会の実現を掲げておりこれは障害者権利条約や障害者差別解消法の理念を反映させたものであります。
次に政策立案過程への参画についてです。 当事者目線の障害者福祉の推進にあたっては障がい者が社会生活を送る上で必要な分野場面において障がい当事者自身が様々な意見を表明できることが重要です。 そこで計画の策定に加わるといった限定的な関わり方を表す参画ではなく様々な会議に広く関わることができる参加と規定しています。
【石田質問2】 努力規定を義務規定にすべき
次に、条例素案では条文の肝となる部分の多くを努力規定としていますが、障害者差別解消法などに則り義務規定にすることを求めました。パブコメでも同様の意見が多数ありました。具体的には、
一つ、「障害を理由とする差別、虐待などの禁止」については、端的に「尊厳を害する行為を禁止する」とか「不当な差別をしてはならない」などと明記すべきです。
二つ、「障害を理由とする差別に関する相談、助言等」および、権利条約の大事な柱である「社会的障壁の除去」についても義務規定にすべきです。
三つ、「財政上の措置を講じるよう努めるものとする」としていますが、条例に則った施策を実施するには、今後、基盤整備や人材の確保、メニューの拡充が必要です。「財政上の措置を講じる」と義務規定とすべきです。
〈そこで知事に伺います〉
障害福祉を強力に推進するためには、今述べた3点について、努力規定でなく、義務規定にすべきと考えますが、それぞれについて見解を伺います。
【知事の答弁】 努力規定を義務規定とすることについてです。
まず障害を理由とする差別虐待などの禁止についてです。本条例案では差別虐待その他の個人としての尊厳を害する行為をしてはならないと明確に規定しています。
次に障害を理由とする差別に関する相談助言等については相談体制その他必要な体制を整備するものとすると明確に規定しています。また社会的障壁の除去については障害者差別解消法では障がい者から申し出があった場合に 合理的な配慮を行わなければなりませんが条例案では法の規定にさらに踏み込み努力規定ではありますが申し出がなくても事業者等は積極的に進めることとしたところであります。
最後に財政上の措置についてです。 財政上の措置については施策の実施にあたり 県議会の議決による予算措置や国の制度見直しを要する事案もあるため財政上の措置を講ずるよう努めるものとすると規定しています
【石田再質問】 県は責務を有し、人材確保等を義務にしたのなら財政の措置も義務規定にすべきでは。
条例案は第4条(県の責務)で県は当事者目線の障害福祉 に関する総合的な施策を策定しこれを実施する責務を有するとしました。
また素案では障害福祉に係る人材の確保と育成については努めるものとすると努力規定でしたが、条例案では人材の確保および処遇の改善に資するための措置については講ずるものとすると義務規定にしたことは評価をしたいと思います。
しかし財政措置については努力規定の ままとのご答弁でありました。
そこで知事に伺います。
県は総合的な施策を実施する責務を有し、人材の確保と育成を義務規定にしたのですから、実効性を担保するには財政上の措置が必要であり第27条の財政上の措置の規定を必要な財政上の措置を講じるものとすると義務規定にすべきと考えますが再度伺います。
【知事の答弁】
当事者目線の障害福祉推進条例の財政上の措置の規定を義務規定にすべきという話でありますけども、財政上の措置につきましては 政策の実施にあたり県議会の議決による予算措置また国の制度見直しを要する事案。これがあります。
こういったことから財政上の措置を講ずるよう努めるものとする、こう規定しているわけであります。義務規定よりもこういった努力規定といったほうがふさわしいというふうに考えています。
後述
財政上の措置について、県議会の議決必要というのは、他の全ての予算がそうです。なので、これは理由にならないと思いますし、障害福祉の充実・前身のための財源確保に反対する会派があるとは考えられません。国の制度との関連性は確かにありますが、そのような場合は、県単独予算を組む事はできますし、その姿勢が問われるところだと思います。